軽自動車枠だけでなく日本の自動車で一番売れている「ホンダ N-BOX」が、2024年9月26日に一部改良を実施。アウトドアテイストに仕上げられた新グレード「JOY」が追加になりました。
■アウトドアギア仕様が市民権を得るなか……
軽自動車の域を超えた質感の高さや、走行性能の高さ、優れたユーティリティ性能などが高評価を受け、いまや日本のベストセラーカーへと成長したN-BOX。24年10月に発表された同年上半期の新車販売台数も、登録車を含めたすべての乗用車で1位を獲得。軽自動車では15年から不動の1位を守り続けています。
そんな完璧に見えるN-BOXにも、ひとつだけ欠点がありました。それは、競合他社の人気グレードでもある“アクティブギア系”グレードがラインナップされていないことです。
世のアウトドアブームを受け、クルマ業界にもRVブームが到来。軽スーパーハイトワゴンでその波をいち早く捉えたのは、ライバルの「スズキ スペーシアギア」でした。同社のSUV「ハスラー」のイメージをスペーシアと融合させたデザインはヒットし、販売比率の3割を獲得する(先代モデル)ほどにまで成長を見せました。
その傾向は当然他社にも広がり、ダイハツ タントクロスや、三菱 デリカミニなど、SUVとのクロスオーバーともいえるアクティブギア仕様が次々に登場。現在でも人気を博しています。ホンダはこの波へ一番最後に乗ることとなりましたが、ようやく待望のアウトドアグレードが追加となったのです。
■JOY独自の仕様が盛りだくさん!
新グレードJOYの最大の特徴は、外観に黒の樹脂パーツを増やしSUV風のスタイリングを手に入れている点です。N-BOXのノーマルグレードをベースに、前後バンパーとサイドミラー、ドアのアンダーパネル、ドアハンドルなどをブラックパーツで構成し、タフなイメージを演出します。ノーマルではブラックアウトしていたヘッドライトガーニッシュは、JOYではシルバー化。専用デザインのフロントグリルと相まって、ノーマルとは違ったイメージのフロントフェイスを形成しています。
ボディカラーにもJOY専用色が用意され、アウトドアシーンに馴染みやすいカーキやベージュなどのアースカラーが設定されました。2トーンカラー仕様はカスタム同様ブラックルーフのみの設定ですが、ボディのブラックパーツと共通感があり一層引き締まった印象になります。
そして、インテリアではダッシュボードやドアパネルが専用のベージュカラーとなり、シート表皮も専用で設定。インパネ周りのデザインがほかのN-BOXと共通ということもあり、シートの模様が一層目を惹きます。
チェック柄の専用ファブリック表皮は、防水・防汚仕様。ターボエンジン車とNA(自然吸気)車で素材が違い、撥水ファブリックと組み合わせられる素材は、ターボ車がプライムスムース、NA車にはトリコットがそれぞれ採用されます。
インテリアのハイライトは、JOYならではの装備「ふらっとテラス」でしょう。ラゲッジのフロア後端がシリーズ他車より80mm高く設定されているため、リアシートを倒してラゲッジフロアを拡大した際によりフラットな床面に近づきました。そして、リアシート背面とラゲッジボード上面に、シート表皮と同じチェック柄の撥水ファブリックを使用。ラゲッジ展開時には足が伸ばせてくつろぎやすい、まるでテラスのような空間が現れます。ちょっとした休憩時などでも、積極的にリアシートを倒してくつろぎたくなる、JOYならではの快適装備だといえるでしょう。
■充実のアクセサリーも魅力的
エンジンラインナップは前述の通り、ターボとNAの2種を用意。FFと4WDがそれぞれ選べ、トランスミッションはCVTのみとなります。車両価格は、JOY FFが184万4700円、JOY 4WDが197万7800円、JOYターボ FFが204万4900円、JOYターボ 4WDが217万8000円。それぞれ2トーンカラーは+8万2500円で用意されています。
ADAS(先進安全運転支援システム)のホンダセンシングは、全グレードに標準装備。安全ブレーキ系や、半自動運転のACC(アダプティブクルーズコントロール)もすべて付いています。
同時発売のアクセサリーが充実している点も、JOYの嬉しいポイントでしょう。HONDAのロゴが入ったフロントグリルや、ボディに彩りを与えるステッカー類、マッドガードやルーフキャリア、室内のユーティリティネットなど、好みのアウトドア仕様に仕上げられるアイテムが揃っています。
ついに出揃った3代目N-BOXのラインナップ。JOYのようなアウトドア仕様を待っていた人もいるでしょう。ホンダが発表したJOYの月販計画台数は、3000台。毎月1万台販売されているN-BOXの約3割という数字は、ちょうど前述のスペーシアギアの販売比率から考えても妥当な台数なのかもしれません。ノーマル、カスタム、そしてJOYと選択肢が増え、ますます魅力的になったN-BOX。販売台数トップの牙城は、なかなか崩れそうにないかもしれません。
<文=青山朋弘 写真=ホンダ>